【VNQセクター分析】アメリカ不動産セクターはREITの集合体。法人税免除パワーで突き進むが、ウィーワークという強敵と出会う

2019年10月6日

こんにちは、アーサーです。

今回はアメリカ不動産セクターETFのVNQをご紹介します。

データソースはバンガードのファクトシート(2019年6月30日時点)です。

VNQの概要

ベンチマークMSCI USインベスタブル・マーケット・
不動産25/50インデックス
ティッカーVNQ
経費率0.12%
ETF純資産総額33.83億ドル
ファンド純資産総額64.15億ドル
配当スケジュール四半期毎
設定日2004年9月23日
上場取引所NYSE Arca

VNQの詳細データ

構成株式銘柄数189
時価総額の中央値157億ドル
株価収益率34.2倍
株価純資産倍率2.6倍
株主資本利益率7.3%
利益成長率16.2%
売買回転率24.0%
標準偏差13.17%

VNQの時価総額内訳

大型株35.1%
中・大型株6.3%
中型株29.6%
中・小型株14.9%
小型株14.1%

VNQの産業構成

特化型REIT33.0%
住宅REIT14.4%
リテールREIT12.8%
ヘルスケアREIT9.5%
オフィスREIT9.4%
工業REIT7.9%
分散型REIT4.9%
ホテル&リゾートREIT4.5%
不動産サービス2.7%
不動産開発0.4%

VNQの保有上位10銘柄

Vanguard Real Estate II Index Fund11.2%
American Tower Corp.6.8%
Crown Castle International Corp.4.1%
Prologis Inc.3.8%
Simon Property Group Inc.3.7%
Equinix Inc.3.1%
Public Storage2.8%
Welltower Inc.2.4%
AvalonBay Communities Inc.2.1%
Equity Residential2.1%
純資産総額に占める上位10銘柄の割合42.1%

VNQのトータルリターン

2019年6月30日までのトータルリターンです。

過去1年12.21%
過去3年4.03%
過去5年7.69%
過去10年15.46%
設定来(2004~)8.80%

VNQの分配金情報

分配金の単位はドルです。

2019年

2019/09/240.744
2019/06/270.827
2019/03/280.616
合計(暫定)2.187

2018年

2018/12/130.949
2018/09/241.144
2018/06/180.732
2018/03/260.706
合計3.531

2017年

2017/12/211.264
2017/09/220.854
2017/06/230.801
2017/03/220.595
合計3.514

(参考:VNQ | Vanguard Real Estate ETF | Dividend History | Dividend Channel

VNQの株価指標

予想PER:38.42(2019年8月31日時点、モーニングスターHPより)

配当利回り:3.35%(2019年10月6日時点)

VNQに対する解説

VNQはアメリカ不動産セクター全体に投資できる便利なセクターETFです。
REITだけで96.4%を占めるため、リートETFとみてもいいかもしれません。

REIT(リート)とは投資法人が投資家から集めた資金を不動産に投資し、そこから得られた賃貸収入や不動産の売却利益を配当金として還元する金融商品のことで、不動産投資信託とも呼ばれています。
REITの投資法人は利益の9割以上を配当することで法人税の免除を受けられるのが最大の特徴で、税制に強い商品だといえます。

特化型REITが33%と最大の構成率です。
特化型REITではセルタワーとも呼ばれる電波中継塔、コンピュータやデータ通信装置の運用に特化したデータセンターなどに投資しています。

他にも住宅REITが14.4%、ショッピングモールなどの小売り関係不動産に投資するリーテルREITが12.8%、老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、病院などに投資するヘルスケアREITが9.5%、オフィスREITが9.4%、工業REITが7.9%と各産業に分散されていることがわかります。

VNQの強み

  • 条件を満たせば法人税が免除される
  • 比較的不景気に強い
  • 各産業に分散されている

不動産セクターで一番の強みは、REITの投資法人が条件を満たせば法人税の免除が受けられることです。
上にも書きましたが、利益の9割以上を配当することで法人税の免除を受けられるというのは何度もいいたくなるほど大きな利点になります。

アメリカでは法人税が連邦法人税と州法人税に分かれています。
連邦法人税は一律21%です。
州法人税は州によって税率が変わってきますが、そもそもテキサス州やネバダ州、ワシントン州など州法人税を設定していない州がいくつかあります
それ以外の州ですと、3%の州もあれば12%の州もありますが、5%から8%が最も多いゾーンです。
この法人税を単純に合計すると26%から29%にもなってきます。
普通の企業ではこの大きな割合が税金として持っていかれます。
これらは本来、株主の利益になるはずだったものです。

しかしREITではこの法人税が実質免除になります。
またその条件が配当金を利益の9割を出すこととなっているので、株主還元もほぼ確実に行われます
さらに法人税は政策によって変わるものなので、法人税が上がれば普通の企業は損をしますが、REITではそれがありません。
このようにREITの法人税免除には大きなメリットがいくつもあります。

不動産は不景気になってもすぐに賃料を下げるようなことはしないため、比較的不景気には強いほうです。
ただしリーマンショックのときは例外でした。

住宅やヘルスケア、オフィスなど各産業に分散されているのも強みになります。
各産業の不動産に投資するイメージですね。
特にオフィスREITは景気循環なところがあり、不景気になると収益率が落ちる可能性が高いのですが、他分野のREITがそれを補う形になります。

VNQの弱み

  • 住宅はローンを組んで買うことがほとんどなので、金融危機のときに打撃を受ける可能性がある
  • ウィーワークの台頭により不動産セクターの情勢が大きく変わりそう
  • 配当率が高い分、割高

不動産の中でも住宅はローンで買われるため、金融危機時にその債権の多くが破綻してしまうと経済に大きな打撃となります。
有名なのがサブプライム住宅ローン危機で、このときは住宅ローンを債券化したサブプライム・モーゲージが過剰に買われた結果、住宅バブルが発生し、そして崩壊し、住宅価格の大暴落が市場をおそいました。
このタイプの危機は察知しづらいです。

使用されていないスペースを中小企業に貸し出す「コワーキング」事業をおこなうウィーワークの登場により不動産セクターの情勢も変わりそうです。
というのもウィーワークでは短期賃貸借契約が主流なのですが、そのメリットが大きいんです。
アメリカでは、オフィスの賃貸借期間は10年から15年が一般的です。
これに対してウィーワークはなんと最短で1ヶ月となります。
社員の増減に対して柔軟に対応できるのは大きな魅力です。
このメリットに気付いた多くのテナント企業が、ウィーワークの顧客になっていきました。

そうなると既存の不動産事業は長期賃貸借契約のままだとウィーワークにやられてしまいます。
よって結局は短期賃貸借契約がより流行る結果になると思います。
その際に不動産セクターを利益を享受するか損をするかは正直わかりませんが、セクターにとって脅威であることは間違いないです。

不動産セクターは割高で取引されることが多いです。
その原因は法人税免除のために利益の9割以上を配当に回すためです。
配当率は3%を超えることが多く、それ以上となるとなかなか上がってくれません。
その市場の動きが結果的に不動産セクターを割高にさせています。
ただ、ほぼ確実に株主還元されるわけなので割高なのは仕方ない、という感じもします。

不動産セクターのこれまでのリターンを考察

不動産セクターは2004年9月から8.8%のトータルリターンをあげてきました。
これは他のセクターと比べても悪くない数字ですが、ハイテクなど好調なセクターと比べると少し落ちてしまいます。
この原因はやはりリーマンショック時のサブプライム住宅ローンの崩壊の影響です。
需要の増大に伴う供給増から一転して、住宅バブル崩壊、しかし供給は急には減らせないものなのです。
ただそれでもここ10年のリターンが15%を超えてくるのはさすがの一言で、過去の投資家が予想した以上の底堅さを見せましたね。
ここ3年のリターンは4%程度でしたがここ1年は12%越えと復調しました。
米中貿易戦争で相場が乱高下するなか、不動産は基本的に貿易摩擦に直接関係しないこと、そして持ち合わせているディフェンシブ性を評価されて上昇しましたね。
国債利回りが極端に減少していくなか、不動産セクターの利回りの高さが注目されたのかもしれません。

VNQの今後

不動産セクターは税金面で大きな優遇を受けていることがわかりました。
そして株主還元をほぼ間違いなく享受できるというのも大きいです。
その結果として割高になってしまうため、「PERは15が目安」といった評価基準はこのセクターには当てはまらないです。
過去の不動産セクターの株価指標と評価することが大事になってきますね。

なお、残念ながらVNQは日本の証券会社のなかでは、サクソバンク証券の一般口座でしか取り扱いされていません。
今後SBI証券やマネックス証券がVNQを取り扱っていただけると助かるのですが…

VNQの代わりとしてSBI証券ではS&P不動産セレクト・セクター指数に連動するXLRE(不動産セレクト セクターSPDR ファンド)を取り扱っています。
信託報酬は0.13%とこちらも安いのでおすすめです。

こちらの記事では不動産ETFのIYRとXLREを比較していただいています。
過去の利回りが特に参考になるのですが、2年前は利回りが4%を超えていたみたいですね。
今の利回りは3.5%を割っているので、そういう意味では少し割高になってしまったかもしれません(´・ω・)

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この記事では各セクターを成長、安定、割安の3つの指標を使って評価しています。

ディフェンスに定評のある公共セクターです。

地味さならNO1の素材セクターです。最近はVOOなどに投資するインデックス投資が流行っていますが、そのVOOのなかには素材セクターも入っているわけです。不調のセクターなので辛口なところがありますが、一見の価値はあると思います。